スキップしてメイン コンテンツに移動

移転しました

地球の長い午後:ブライアン・W・オールディス 感想

あらすじ

 はるか未来、太陽は寿命がつきかけ、地球も自転が止まり、片面が常に昼、もう一方は常に夜になっていました。動物たちは大半が死滅し、代わりに植物が地表を覆い、食肉植物が闊歩する世界。絶滅寸前の人類は、利用できるものは利用して細々と生きていました。退化してしまった文化の中では、もはや人類の絶滅も遠くありませんでした。大陸を覆う巨大な樹の上、「頂き」には網が張り渡され、月と地球の間を1マイル(1.6km)ほどもある植物の蜘蛛、「ツナワタリ」が行き来します。

 そんな森に棲むある部族の大人たちは、体の衰えを悟り、掟にしたがって「天」にのぼります。残された若者の一人、グレンは、ある出来事がきっかけで集団から追い出されてしまいます。

 唯一彼についてきた、仲間のポイリーとともに、グレンのゆく当てもない旅が始まります。

感想(ネタバレがあるかもしれません)

 この作品はジャンルで言えばSF小説なのでしょうが、機械的な話はほぼ出てきません。非常に生々しい生存競争が起こる、植物の支配する世界で、主人公の旅路を描いたものになります。

 人類の文明が崩壊した後であるので、退廃的な印象を受けることも多いですが、人がいなくなった世界で生と死を繰り返す植物達の姿は、どこか生命の強さというものを感じます。

 設定として、人間の知能は現在より遥かに劣っているので、登場人物の理解力のなさを歯がゆく思うこともあるかもしれません。非常に利己的というか、井の中の蛙という言葉がぴったり合うような人物が何人も登場します。主人公グレンの性格も少し理解しがたいものがありますが、そこまで一貫して書かれていることで、この世界観が出来上がっているのだと思います。

 植物が歩いたり、考えたりと、現在の常識で考えていてはこの本を読み進めることは出来ないでしょう。この本を読むことで、何かを得るとかそういうことが重要ではないと今回は思いました。この世界観に浸ることの方が遥かに楽しかったです。

 主人公に感情移入も出来ませんし、何か教訓があるわけでもないので、そう思うとある意味非常にリアルな話であったのかもしれません。

 夢心地と言えばいいのでしょうか、現実の延長に存在するという世界の話であるのに、現実離れした世界観のせいで、どこか夢を見ているようなそんな物語でした。

コメント

人気の投稿