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写真構図のルールブック:内池秀人、福井麻衣子 黄金比について


僕は趣味、とまではいかないかもしれませんが、カメラを持っているので時々撮りに行ったりします。これは良いな、という写真にはどこか共通点があることは何となく気付いてはいましたが、それが一体何なのかが分かっていませんでした。

 この「写真構図のルールブック」では、構図というものについて簡単に解説してあります。その中で気になったことがあったので、今日はそれについて考えたいと思います。

黄金比

 黄金比、一度は聞いたことがある、という人が殆どではないでしょうか。美しい比である、というくらいの知識しかない人も多いと思いますが、具体的にどんな比なのか、ということについて話したいと思います。

 黄金比とは$1:\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}$という比のことで、約5:8になります。

 この$\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}$という数は、方程式$x^2-x-1=0$の解の一つで、$\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}=\alpha$などとおくと、$\alpha^2-\alpha-1=0$が言えます。また、これより、$\alpha^2=\alpha+1$が得られます。

 この方程式はなんぞや、と考えてみると、これは、数列の漸化式$a_{n+2}=a_{n+1}+a_n$の特性方程式として見ることが出来ます。

 特性方程式は、高校数学にも登場するものですが、隣接する項についての漸化式を求める時に使いました。

 さて、上で登場した$a_{n+2}=a_{n+1}+a_n$という漸化式ですが、$a_1=1,a_2=1$として考えてみると、次のようになります。
$a_3=a_2+a_1=1+1=2,a_4=a_3+a_2=2+1=3,...$これを順に並べてみると、
$1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,89,......$になります。有名なフィボナッチ数列ですね。

 前の二つの項を足すことで、次の項が出てくる、というシンプルな数列ですが、それの一般項を求める際に、先ほどの方程式が出てきました。また、フィボナッチ数列と黄金比の関係として知られているのが、隣り合うフィボナッチ数の比は黄金比に収束する、というものです。

 フィボナッチ数列の一般項は、$F_n=\cfrac{1}{\sqrt{5}}\{(\cfrac{1+\sqrt{5}}{2})^n-(\cfrac{1-\sqrt{5}}{2})^n \}$です。(これをビネの公式といいます。)

 ここで$\alpha=\cfrac{1+\sqrt{5}}{2}、\beta=\cfrac{1-\sqrt{5}}{2}$とすると、$lim_{n \rightarrow \infty}\cfrac{F_{n+1}}{F_n}=lim_{n \rightarrow \infty}\cfrac{\alpha^{n+1}-\beta^{n+1}}{\alpha^n-\beta^n}$。

$\alpha>\beta$より、$lim_{n \rightarrow \infty}\cfrac{\alpha^{n+1}-\beta^{n+1}}{\alpha^n-\beta^n}=lim_{n \rightarrow \infty}\cfrac{\alpha-\beta(\frac{\beta}{\alpha})^n}{1-(\frac{\beta}{\alpha})^n}=\alpha$

 黄金比とフィボナッチ数列は関係がある、ということを聞いたことがある方はいると思いますが、実際どう関係あるかを知らない人が多いのではないでしょうか。ここにあげたのは、性質の一部でしかないので、興味ある人は調べてみてください。

黄金比は何故美しいのか

 黄金比は様々な自然のものに現れるといいます。ひまわりや松、バラなど植物の形や、枝の生え方などにも黄金比、またはフィボナッチ数列が関わってきます。

 黄金比は昔から美しい比であるとされ、建物やデザインにも取り入れられてきました。自然界を見る限り、この黄金比が出てくるのは必然なのでしょう。

 目の肥えた芸術家は自然界から学びます。自然界を教科書とするうちに、調和のとれた比というのは黄金比であると刷り込まれていくのだと思います。

 しかし、黄金比の美しさが分かる人というのは少ないのかもしれません。自然や芸術作品と向き合い、観察眼が備わったものにだけ真の美しさが分かるのかもしれませんが、黄金比の現れる自然現象を見て心が安らぐことを考えると、やはり調和のとれた、不自然ではない比であると思います。

 また、美しいというものには、健康さが必要だと思います。痩せすぎたモデルよりも、健康的な肉付きのモデルの方が美しいと思うように、美しさ、というのは洗練されたものではありますが、どこか平均的な要素を含んでいるような気がします。

 人の顔の平均をとると、美男や美女になるというじゃないですか。美は飛びぬけた個性ではなく、調和であると、そのように思います。黄金比が美しいのは、そういうわけであると思います。

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