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思想と性格の違い
思想とは
精神的な活動全般を指す意味での「思想」ではなく、それより上位の、複雑で統括された思考の集合体という意味で「思想」という言葉を使おうと思います。そういうように解釈すると、思想は、信念という言葉に置き換えることが出来るかもしれません。
そういった意味での思想が登場する分野は、芸術や学問、特に哲学や法律などでしょうか。そういう意味での思想ももちろん扱いたいと思いますが、もう少し広くとって、生きていく上での、個人哲学とでも言えばよい「思想」も含むことにします。また、そうした大きな指針に加え、日々の生活の中で当然だと思っていること、例えばそれは年功序列かもしれませんし、恩は恩で返すべきだという考えかもしれません。ここでは、そうした広い意味で、「思想」または「信念」を考えていきたいと思います。注意したいのは、これらはそれぞれ独立しているかもしれませんし、していないかもしれません。つまり、学問から得た思想が日々の生活の思想に影響を与えることもあるでしょうし、その逆もあります。また、全く影響を与えない場合もあることもあるので、それは念頭に置いてください。
さて、まずは最初の意味での思想、つまり学問や芸術における思想についてですが、これは、単独で作り上げた思想もあるでしょうが、その多くは過去の思想の統合であったり、そこから着想を得るなどしているでしょう。そう思うと、この場合の思想というのは、個人が作り上げたものではなく、人と時間が関わって出来たものということになります。哲学などは、前時代の思想を否定したり肯定したり変更したりして、脈々と続いています。そうして現代まで残ってきた思想というのは、時代という大きな流れの中で洗練され、選別されていくことになります。学問や芸術の領域でのある「思想」を中心とする図を作り、その関係者を年代順に並べていくと、木のようになるかと思いますが、その中で多くの人がその思想に力を注ぎ、そして無駄な枝は切られてきたということが分かります。この分野での思想というのは、そうした集合体によって出来た、思考の集合体、ということになるでしょう。
個人哲学的意味での思想については、学問や芸術などで培われた思想から影響を受けることもあるでしょうし、自分で見つけ出したものかもしれませんが、どちらにせよ、その思想は日々の生活によって裏打ちされたものであると思います。前者であれば、どの思想が自分にとって良いか、自分の指針となるか、ということは、日々の生活を根拠とするしかありませんし、後者については思想の出来上がりかたから見てそう言えます。学問や芸術での思想が、非常に洗練され、高度に抽象化されたものであるとすれば、この場合の思想は、地に足のついた、個人の生活に根の張った非常に具体的なものになります。
日々の生活の中での思想、もう一度例を出しておきますが、年功序列など、当たり前だと思っている、「思い込み」とも言える思想についてです。これはある思想を作り上げようとして出来たものではなく、社会生活が結果的に生んでしまった「思想」であると思います。基本的には社会生活を円滑に行うために出来た暗黙の了解で、それは生活の中で無意識に「学んでいく」ことになります。こうした暗黙のルールは、必要なものもありますし、必要ないものもあります。必要あるもの、また、法律などの社会のルールに反しない限り、基本的になにをしてもいいはずですが、そうした必要のないルールに縛れることも多いです。実際にはこれは外部から強制されたものではなく、そうしたルールに逆らう罪の意識や恐れなどは、内から出たものです。この場合の思想は、得ようとして得たものではなく、生きていく中で「空気を読む」ことで身に着けた、言わば処世術のようなものであるとい思います。
性格とは
性格を考えることで、思想についても分かることがあります。思想というのは、基本的に頭の中に存在する思考であるのに対して、性格というは、ある状況下での反応、行動の傾向である、ということが出来ます。飽きやすい性格だ、というのも、物事を続けることが面倒くさくなる傾向にある、というのが正確な言い方でしょう。性格は帰納的ではありません。昨日まで続かなかったことであっても、今日始めたことがこれからずっと続くかもしれません。性格、というのは脳が機能的に判断して、今回も、これまでもそうであったから次もそうなるに違いない、とした予想であるということが出来るでしょう。
脳の便利な機能として、これまでもそうだからこれからもそう、という改めて考えることがないようなものが備わっています。しかし、それが「自我」を生み出し、つまりこれまでと変わらない確固たる自分が存在する、という幻想を生み出している、とも言えます。性格というのは、その人に備わった性質ではなく、ある場合にその人がとった行動、反応の事実であって、これからのことについて語られたものではありません。
まとめ
性格については短くなりましたが、こうしてみると思想と性格は違うものである、というのが分かります。それは、「思想」が意識無意識関わらず、考え抜かれたものであるのに対して、「性格」とは、考え抜かれていないものであることからも良く分かります。
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