移転しました
超ざっくり哲学史「バロック」
バロック
17世紀、ルネサンスの調和した文化から、それらを超越する試みとして始まったのが「バロック」でした。芸術面においてよく知られいてるのではないでしょうか。この時代の芸術の特徴としては、誇張された表現や、コントラストがはっきりした絵画、凝った装飾などが挙げられるでしょう。
「ルネサンス」が古代文化の復興として起こり、ローマやギリシアの思想もうけついでいましたから、調和や永遠性を信じていたのも当然のことでした。これに対し、人生は儚いもので、移ろいゆくものであるという考えが、「バロック」の特徴でした。この時代を象徴する3つのキーワードについてまとめようと思います。
メメント・モリ(memento mori)
この言葉は「自分がいつか必ず死ぬということを忘れるな」という意味です。この時代までこの言葉があまり使われなかったことに驚くべきではありますが、現代でも自分が明日にも死ぬかもしれない可能性を忘れていることを考えると、当然のことなのかもしれません。「暗黒時代」でキリスト教が徐々に広まっていましたが、救済や天国など死後についての思想も同時に広まったことが関係があるようです。
少し話がそれますが、現代人は「死」を遠ざけることに成功したと言って良いのではないでしょうか。正確に言えば「死」を見ることを遠ざけることですが。自宅のふろ場でさえ死ぬ可能性は0ではありません。毎日お風呂に入る人であれば、60歳までに少なくとも365×50=18,250回は死ぬ機会があることになります。紙一重の生活を続けていることを念頭に置くのも経験としては良いと思います。
ヴァニタス(vanitas)
これは「人生の虚しさ」、「虚しさ」を表す言葉で、特に絵画の分野で使われた言葉でありました。絵画においては、時間(個人に残された時間)の象徴としての時計や、衰退を示唆する熟した果実などがあげられます。もちろん直接的に「死」、つまり頭蓋骨などを描くこともありました。
終わりがあるから虚しいのでしょうか。自分が得た何もかもが無に帰すという、得ることの無意味さや、その無意味さを感じる自分すらいないということが虚しさという感情を生み出しているように思います。楽しみも悲しみも不幸も幸福も悉く虚無へと誘うのが「死」であると、この時代では強く認識していたようです。
実際この時代の絵画を見ると、どうしても死を抜きにしては見れないものばかりのようです。陰影が強いせいか、画面の隅に書かれたような「死」であっても強烈な印象を残します。全体的に退廃的で、この時代がこのような空気であったようにも思えます。死がこの時代に影を落としているようにも思えます。
カルペ・ディエム(carpe diem)
上では、死を前面に押し出し、人生は虚しいものだというように言いましたが、当時の人々は悲観的であったのでしょうか。このカルペ・ディエムは、「その日を摘め」という意味で、意訳すれば「今この瞬間を楽しめ」という意味になります。
バロック時代には、「死」が前提、つまり必ず終わりがあり、永遠性については考えても仕方がないという風潮があったので、人々は日々「楽しいこと」に明け暮れようとしていました。快楽主義につうじるものがありますが、快楽主義は死を前提にしていたのではなく、人が苦よりも快楽を好むということを前提にしていた点で異なります。
仮面舞踏会やオペラなど、現実を離れらる「楽しみ」が流行の対象でした。ルネサンスとバロックをまたいで活躍した劇作家としてシェイクスピアが挙げられますが、彼の作品の中にも「人生は劇場」というような言葉が登場しており、人々の人生観を象徴しています。
哲学
この時代の哲学思想の特徴の一つとして、「観念論(アイデアリズム)」と「唯物論(マテリアリズム)」がはっきりわけられたことが挙げられます。言葉についての確認をしておくと、前者が存在などは突き詰めれば精神的なものにいきつくという考えであるのに対して、後者は全ての現象は物質的であるという考えです。
「唯物論」を支持していた人として、トマス・ホッブスやニュートンなどが挙げられます。万物は全て物質や物理現象であり、人間の精神も全て何か部品の寄せ集めである、というように考えていました。ただ、ニュートンなどはキリスト教徒でもあり、無神論者であったとは限りません。唯物論と無神論は別のものであるという可能性が見えてきましたが、気が向いたらこれについても取り上げたいと思います。
ラプラス変換など数学の分野で有名なラプラスの考えに、「ラプラスの悪魔」があります。これは、「もしもある知性が、ある時点の全ての物質についての情報を知り得たなら、過去も未来も現在と同じように見える」というものです。別にそういう存在がいると主張しているわけではないことに注意してください。こうした、全てが法則などに基づいて初めから決められているという考えを「決定論」といいます。
まとめ
ルネサンスの後、17世紀頃に始まった「バロック」は、死を念頭に置き、はかない人生の一瞬一瞬を楽しもうとする動きが特徴でした。哲学においては、元々あった「唯物論」、「観念論」がはっきりと別れた時代でありました。
「デカルト」
「デカルト」
コメント
コメントを投稿